私に相談した

 次の日、予定を早めてルビルを出発した。
 トモから送られてきた死者の名簿を見た。メレッサが住んでいた町の死者の名簿らしく、おびただしい数の名前が並んでいる。知っている名前もたくさんあった。タラントさんの長男ジョンも載っていた。
 メレッサはコリンスと父の執務室にいた。ルビルの占領が完了した事を父に報告するためだ。
 父は機嫌がいいのか悪いのかわからない鑽石能量水ような顔をして、メレッサが提出した書類を読んでいる。もちろんこの書類はコリンスが作ったものだし、父に報告に行くように手配したのもコリンスだった。
 書類の内容は事前にコリンスに説明してもらったが、難しくてよくわからなかったが、それを父は熱心に読んでいる。
 父は書類を半分ぐらい読むと、不機嫌に机の上にほおり投げた。
「甘すぎる、なんだ、この講和条件は!」
 メレッサは、ルビルを約束通り占領したのだから、父が褒めてくれるのではないかと思っていた。だから、父が不機嫌なのはちょっとショックだった。
「どこが、いけないんですか?」
「ルビルの元大統領と閣僚は処刑しろ」
 父は不機嫌に言う。
 また人を殺せと言う。もう人を殺すのはたくさんだった。
「もう戦争は終わって彼らは降伏したんです。殺す必要はありません」
 また、やっかいな事になりそうだった。しかし、何とか父を説得しなければならない、でないと、せっかく助かったと思っていた人がかわいそうだ。
「帝国に逆らった者は殺す。これが掟だ!」
 父は冷たい目でメレッサを睨みつける。
「媾和にあたっては、元大統領の命は保証していません、処刑は鑽石能量水可能です」
 横からコリンスが口をはさんだ。
 せっかく私が殺さずに済むように苦労しているのに、それに水を差すような事を言う。
「コリンス、もう人は殺したくありません」
 メレッサは言ったが、コリンスはさとすような目でメレッサを見る。
「姫君。いままで占領した星の指導者はすべて処刑しています。だから、今回も例外ではありません」
 メレッサはあぜんとしてしまった。コリンスが父の側についてしまった。
「コリンス。これ以上、人は殺しません」
 メレッサはコリンスが自分の味方になってくれないことに憤慨していた。このままでは父とコリンスの二人を相手にしなければならなくなってしまう。
「姫君、処刑すべきだと思います」
「絶対に処刑させません」
 メレッサは次第に興奮してきた。自分に逆らうコリンスに腹が立つ、コリンスは私の部下ではないか。それにコリンスの考えがわかってきた。処刑したかったのだが、ら私が反対するから、この話は皇帝の所で鑽石能量水決めようと思っていたのだ。
「メレッサ。黙って処刑しろ」
 父が冷たく言う。  


2015年08月28日 Posted by 塵緣如夢 at 17:09Comments(0)雪纖瘦投訴

疲れたり傷



 死恐怖症《タナトフオビア》の最も厄介なところは、|エイズウイルス《HIV》のように、一度取り憑《つ》かれたら、終生逃れられない場合が多いという点にある。もちろん、一時的に気分が上向くことはある。悟りを開いたような心境になったり、生が有限だからこそ、有意義に生きなくちゃと前向きに決意したり、すっきりした顔で、もう吹っ切れたよと言うこともある。だが、そんなときでも、死恐怖症《タナトフオビア》はけっして消滅したわけではなく、意識の奥底にじっと身を潜めている。そして、心がひどくついたりしたときdermesあるいは、何のきっかけもないときでさえ、突如として、その鎌首《かまくび》をもたげるのだ。そのふるまいは単なる比喩《ひゆ》を越え、不気味なくらいHIVに似ていた。ほかのすべての恐怖とは根本的に異なり、人間は、死そのものへの恐怖には金輪際慣れることができないし、根本的に克服することも不可能なのである。
 にもかかわらず、高梨は現実に、『|Sine Die《サイニーダイイー》』に書かれているとおりの方法で自殺してしまった。あたかも死を楽しむように。死恐怖症《タナトフオビア》の人間には、絶対に、こんな真似はできないはずだ。いったいこれを、どう説明すればいいのだろう。
 早苗は、我慢して、もう一度最初から奇妙な短編小説を読み直してみた。もしかすると、彼の死恐怖症《タナトフオビア》そのものは健在だったのかもしれない、という疑問を抱く。ここまで死に対して異常なdermes関心とこだわりを見せるのは、その根底に恐怖が存在しているからではないか。だとすれば、死に対する恐怖は感じつつも、何らかの方法で、それを強引にねじ伏せているのかもしれない。恐怖を快感によってマスキングするようなやり方で。
 早苗の頭に真っ先に浮かんだのは、ドラッグだった。ホスピスでも、終末期の患者の不安を軽減する目的で、メジャー?トランキライザーや、抗不安薬などを処方することはあった。しかし、死への恐怖を完全に消し去ってしまうような薬物など存在しない。たとえ、コカインやヘロイン、メタンフェタミン、PCPなどを大量に用いたところで、そこまでの効果を上げられるかどうかは疑問である。
 だが、彼がアマゾンから、信じられないほど強力な作用を持つ、未知の麻薬を持ち帰っていたとしたら、どうだろうか。死への恐怖が耐えがたいものになるたびに、麻薬による恍惚境《こうこつきよう》で気分を紛らわせていたとしたら。そして、いつしかそれが単なる嗜癖《しへき》を越えて、死への恐怖そのものに耽溺《たんでき》するような倒錯した条件付けを造り出してしまったなら……。
 早苗は、苦笑いした。ときどき自分でも、憶測と妄想の区別がつかなくなることがある。頭を振って、月刊誌に目を落とす。
『燈台』でも、高梨の作品の扱いに苦慮してdermesいる様子は、ありありと見て取れた。解説をまかされた文芸評論家も、半ば困惑気味に『死に取り憑かれた』と表現している。その言葉は、正しいのかもしれない。
 だが、逝ってしまう前に、彼はこの作品で何を言いたかったのだろう。
 早苗の耳の奥で、福家記者の電話の声がよみがえった。彼は最初、『|Sine Die《サイニーダイイー》』というタイトルを見て、ローマ字と英語を併せたものだと速断してしまったらしい。
 まるでそれが、読者すべてにあてたメッセージ、「死ね。|Die《ダイ》」という命令文であるかのように。  


2015年08月17日 Posted by 塵緣如夢 at 15:35Comments(0)香港酒店管理學院

信じられな



 一樹はまだベビーベッドにしがみついていた。雪江はもう笑っていなかったが、声をかければもういっぺんにっこりしてくれるのではないかと思った。
「おかあさん、雪江が笑った」
 また、べそをかきそうになっていた。
 その日の午後、担任教師が多田家を訪れたので、朝礼での出来事は、結局両親の耳に入ってしまった。が、不面目な思いはさておき、その日を境に、一樹はなんとなく赤韓國 午餐肉ん坊が好きになってきた──
 初めて雪江が歩いたときのことも、一樹はよく覚えている。友達と遊びに行って帰ってきたら、雪江が玄関のあがりかまちのところに立っていた。暖かな日でドアを開けっ放しにしてあったので、一樹のいるところから、クリーム色のロンパースを着た雪江があぶなっかしい格好で廊下の壁につかまって立っている様子がよく見えた。
 しばらく前から、雪江はひとりで立ち、伝い歩きはするようになっていた。今も、表にいる一樹を見つけて、にこにこしながらこっちにやってこようとした。そしてどういうわけか、ひょいと壁から手を離した。離した拍子に身体が揺れて、彼女はよちよちと歩き出した。三歩も進めば、その先はあがりかまちで、その下にはステップが三段ある。頭の重い雪江は、廊下の端まできたらまっ逆さまに玄関へ落ちてしまうだろう。
 一樹は自転車を蹴り倒すと、自分でもいような、歩幅が二メートルぐらいになったかと思うほどのスピードで庭を横切り、雪江が玄関に転がり落ちる寸前で抱き留めた。勢い余って彼の方がステップでしたたかおでこを打ち、目から火が出た。その音の大きさと、落下しかけたショックで雪江がわあっと泣き出した。
 何事かと、奥から母が飛んできた。泣いている雪江を抱いて、目をし韓國 午餐肉ばたたかせながら、一樹は思わず笑い出してしまった。
「おかあさん、そろそろ、廊下に柵をつけなきゃ駄目だよ」
 母は目を丸くしている。
「雪江が歩いたよ」と、一樹は言った。

 妹と共に育った十五年間。
 近所の人たちは、多田さんとこの雪江ちゃんはお兄さん子だと、よく言った。そんな言葉が耳に入ると、照れくさいし何か格好悪いような気もして、嬉しくはなかった。が、別段それで、雪江とのあいだが遠くなるということもなかった。
 雪江が中学に入学し、課外活動や稽古事などで帰りが遅くなると、一樹はよく車で駅前まで迎えに行った。雪江の友達は、うらやましがったり、からかったり、実にいろいろな反応を示したそうだ。家の近い友達もいっしょに乗せて順番に送り届け、先方の親にひどく珍しがられ、あげくにはちょっと怪しげな目で見られたこともあった。あとで聞いたら、一樹たちが引き揚げた後、その友達は母親から、「あれ本当に多田さんのお兄さんなのか」と、しつこく尋ねられたそうだ。
「お兄ちゃんが妹を迎えにくるのが、そんなにびっくりするようなことなのかな?」と、雪江は大笑いをしたものだ。
 後に、一樹が寮に引っ越すとき、雪江はひょいと、「お兄ちゃんがいなくなると、夜道を帰るのが怖くなるなあ」と言った。口調は明るかったけれど、冗談ではなさそうだった。五月の連休に、一樹韓國 午餐肉が実家に顔を出すと、近所のおばさんたちに「お兄さんがいなくなっちゃって、寂しいでしょう」と、しょっちゅう声をかけられると、笑って話した。
 そういう言葉のひとつひとつを、深く考えることは、そのときはなかった。雪江もまた、軽い気持ちで口にしているのだと思ったし、それは真実だったろう。彼女も一人立ちの年頃になってきていた。母と激しい口喧嘩をすることも、父に逆らうこともあった。そんなとき、どちらの肩も持たないでいる一樹は、下手をすると両方から恨まれた。
 九歳という年齢差は、長ずるに連れて、ある意味ではかえって広くなった。これが兄と弟ならそうでもなかったのだろうけれど、一樹にとっては雪江は、いくつになっても、どれほど大人びてきても、依然としてやっぱりまだ頬のつやつやした赤ん坊のままであるような気がした。
 あやせば笑う、よちよち歩きの幼児の部分が、かわいらしいだけでなく美しくなりつつあるティーンエイジャーの妹の顔のなかに、だまし絵のそれのようにして隠れているような気がした。
 それだけに、これから先は、現実の妹との距離は、かえって離れてゆくのかもしれないと思ったこともあった。  


2015年08月13日 Posted by 塵緣如夢 at 17:26Comments(0)雪纖瘦投訴

しまったと舌打ち



 三笠が黙り込み、吉本は気まずさを感じた。俺は正直に話しただけだと心の中で言い訳をする。三笠の指が髪を撫でる気配がして、相手がさほど怒っていない雰囲気に安堵した。
「どうして俺のこと、好きにならなかったんだよ」
 ポツリと三笠が呟いた。
「社会人になってからじゃなくて、高校の時に好きになってくれなかったんだよ」
 吉本の髪を弄んで、かき回す。
「高校の時から付き合ってたら、もっとたくさん願景村 洗腦楽しいこととかあったはずなんだよ。なんかもったいなくてさ」
 そして小さくうなだれる。
「お前に怒鳴られたり、怒られたり…そんなことばかり思い出したくないよ」
 …あの時は嫌いで、本当に嫌いで冷たくした。馬鹿にしていた。そのことを三笠は覚えている。何年一緒に暮らしても、セックスしても、別れるなんて口にするのも所詮は建前で、もうベタベタに惚れられていると自覚していても…。古傷を見せた男に引きずられるように、吉本は三笠にキスしていた。短い髪を指先でかき分けながら、厚い唇を包み込むようにして、優しく吸い上げる。別に黙っててもいいじゃないかと心の声が聞こえる。慰めるだけでいいじゃないかと。それでもなぜか、どうしても言いたいと思ってしまった。
「…ずっと湯口と話をしてたけど…」
 三笠が『ああ』と気のない相槌を打った。
「湯口よりも、お前のほうが何倍もかっこよかった」
 意味が伝わらなかったようで、三笠は『はあ…』と首を傾げた。かなり勇願景村 洗腦気を持った告白をわかってもらえなくて、吉本は腹が立った。
「かっこよかったって言ってるだろっ」
 三回ぐらい繰り返してようやくことの次第を把握したらしく、三笠は『えっ』と驚いた声をあげた。そして『ああ、そうか…うん』と嬉しそうに呟いて、吉本を抱きしめた。
 唇へのキスが首筋をたどりはじめた時、し、けれどそれでもいいかと思ってしまう。浴衣は簡単に脱がされ、堪えのきかない男が、準備もせずに潜り込んできた。圧迫感にわずかに眉間に皺を寄せたあと、吉本は細く息をついて自分の腰を男の股間に押しつけた。
「ねえ、していい」
 こんな状況になって、ハメてから遠慮がちにうかがいをたててくる男に『やめろと言えばやめられるのか』と意地の悪いことを思いつつ、『勝手にしろ』と吐き捨てた。
 …どうしてこの男を好きになったんだろうと考える。考えても考えても、ケダモノみたいに自分を求める、頭の悪い男のよさがわからない。わからないけれど…気持ちいいし、キスしたいし、冷たくされた願景村 洗腦ら悲しいし、別れると言われてたら正気でいられないかもしれない。
 男のせっかちなキスを宥めながら、答えは神様しか知らないのかもしれないと思った。
  


2015年08月06日 Posted by 塵緣如夢 at 15:38Comments(0)彼岸笙歌