奇跡を現実

 何があったわけでもない。
 リンが顔を上げた。視線を向けた。それだけだった。
 今までと比較にならない威圧感。
 得体の知れない恐怖が纏わりついてくる。

 鳴海を最初に見た時から疑問はあった。
 こんな少年に自分の封印が破られるハズはない。
 しかも、彼は魔導師でもなければ秘術師でもない。ただの子供。
 それが魔女である、世界最高の魔女である自分の封印を解いた。
 有り得ない。
 だが、そのタネは直ぐに解った。
 鳴海はリンの捕縛術を目の前で破って見せた。
 つまり鳴海は消魔体質者だ。
 魔法は突き詰めれば一種の催眠術である。
 世界に対し強力な暗示を掛け、リアリティを強引に捻じ曲げる。
 もちろん事象はその暗卓悅假貨示に対し、強力な抵抗を示す。それを消魔力という。
 魔法とはその消魔力の隙間を掻い潜り、ささやかなにもたらす技術だ。
 もちろん、消魔力の方が大きいと魔法は効果を生まない。
 相手が生物であれば、この抵抗力の固体差は大きい。
 極端に魔法に対する抵抗力が強い存在を消魔体質者と呼ぶ。
 リンが見る限り、鳴海は万人に一人の強力な消魔力を体内に持っている。
 鳴海が特殊な訓練を受けていれば、一流の消魔師。魔法や魔物を打ち消す
特別な術者になっていただろう。
 だが、今の時代、何の役にも立たない。無駄な才能。
 どんな人間でも三つの才能を持っているというが、その一つがこれだとすると、
ある意味で不幸染髮な子だなと思う。



2015年10月14日 Posted by塵緣如夢 at 16:52 │Comments(0)

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